2014/01/13

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ふざけきって書いた。後悔はしていない。

第一話 彼氏の現在価値



登場人物

今 佐瑠子(こんさるこ) 大手コンサルファーム、アッカンベー・アンド・カンパニー日本支社に勤めるキャリアウーマン。28歳。目つきが鋭いので男が寄り付かないが、実はピュア。彼氏なし。
由流 布和子(ゆるふわこ) 佐瑠子の大学の後輩。神保町のまったりした出版社、よっこら出版で編集と広告営業をやっているOL。25歳。腹黒。


プロローグ

布和子 はあ~…。
佐瑠子 どうしたの、布和子。
布和子 どこかにいい男いないかしら。
佐瑠子 あなた、いつもそればっかりじゃない。最近いい出会いはないの。
布和子 出版社飲みで会った中学館の編集さんとか、集迷社の営業さんとか超かっこよかったし。でも彼女いるんだって。
佐瑠子 まあ、大手どころの儲かっててイケイケな人は、女の子には事欠かないでしょうねえ。あなたの会社はどうなの。
布和子 うち? ありえない。よっこらは弱小出版社よ。儲かってる人なんていやしない。社長だってずーっとおんなじ古臭いスーツなんだから。
佐瑠子 あんた金にはうるさいわねえ。相変わらず。
布和子 男ってものは、所詮ATMなのよ。
佐瑠子 (この子…ちょっと見た目がいいからってズケズケと…)。
布和子 はー。佐瑠子先輩、どうして私、掴まえる男がいつもダメ男ばっかりなのかしら。隠れて借金してたり、いつの間にか仕事辞めてたり。そういう男に限って「俺はこんな会社に収まりきる男じゃない、俺はもっとビッグになるんだ」とか言ってその実、何にもやらないのよ。もっと男を見る目を養いたいわ。
佐瑠子 そうね。そういう隠蔽体質とかは良くないわね…。私は今、仕事で企業の買収とか提携に関係するような調査をやってるんだけど、そういう隠蔽体質の会社もやっぱりあるから、骨が折れるわ。
布和子 え、仕事って、あのアッカンベーでの仕事?
佐瑠子 そう。そういう意味では企業の買収とか提携っていうのも、男女の関係に似てるわ。だって、これから一緒になりましょう、って話でしょう? だから、お相手を知るために、いろいろと調べるのよ。相手がどんなビジネスをやっているのか。何で儲けているのか。強みは何なのか、弱みは何なのか。儲かっているのは続くのか…とかね。こういうことを調べるのを、デューデリジェンスって言うのよ。
布和子 へえー。佐瑠子先輩はそういうのを調べてるわけね。で、たまに嘘つく会社もいるってこと?
佐瑠子 まあ、会社対会社だから嘘をつくと裁判沙汰なんだけど。都合の悪い情報は隠したがる会社はいるわ。私たちは、クライアントから依頼を受けて、そういう隠されてる情報がないかとかも含めて実態を調査して、レポートする。まあ、こんなのが仕事の一部かしらね。
布和子 結婚する前に、相手の素行とかを確かめるために探偵を雇う、みたいな?
佐瑠子 あなたいい加減言う事がえぐいわね。まあ、当たらずといえども遠からずなのかも。


第一話 彼氏の現在価値

佐瑠子 じゃあ、金で男の価値をはかる布和子のために、男の価値を計算する計算式を教えましょうか。



布和子 シ、シグマとか…。数学のハゲ松センコーのせいでアレルギーなのよ。
佐瑠子 大丈夫。数式の形をしてるけど、全部言葉でも説明できるわ。順を追って説明してあげる。最初のHVtというのは、「彼氏のt時点における価値」。HVはHis Valueね。t時点というのは、とりあえずは「現時点」のことだと考えてね。次のSavings tは、「彼のt時点での預貯金」を表している。分かりやすいように預貯金と言ったけれども、不動産とかの資産も持っているなら、この中にとりあえず入れていいわ。平たく言うと、いまいくら資産を持ってるのか、ってことね。ここまではいい?
布和子 わかりやすいわ。
佐瑠子 じゃあ、次。次のシグマは、「総和」を表している。高校数学の数列よ。覚えてるかしら。
布和子 ハゲ松のせいでさっぱり覚えてないわ。
佐瑠子 ハゲ松が誰か私は知らないけど、他責にするのは良くないわ。「総和」というのは、たとえば、1+2+3+4+5は15よね。つまり1から5までの数の総和は15だ、と言える。でも1+2+3+…と続いて、これが無限に続くとしたら、紙に書ききれなくなってしまうわよね。これがシグマを使うと、バッチリ紙に書けるようになるわけ。さっきの数式のシグマは、このマークが書いてある右にある分数のkという数に、最初は1を代入するところから始まって、次は2、3、4、と代入していってこれを次々に足す。これが無限大(∞)続くってことを表してるのよ。
布和子 文系だから分かーんなーい。
佐瑠子 分からないなら、自分で勉強しなさい。肝心のシグマの中身を説明するわね。分子のほうが分かりやすいから、こっちから説明しましょう。IncomeマイナスExpenseと書いてあるわね。これは、t+k時点での彼の収入(Income)から支出(Expense)を引いたものを表しているの。分かりにくかったら、t+kは年だと思って。つまり彼が一年にいくら稼いで、そこからいくら出ていくか。引き算すれば、一年に残るお金が出るわね。もちろん、出ていくお金のほうが多いなら、マイナス。つまり赤字になるわ。
布和子 入ってくるお金より多く使っちゃう男はダメね。
佐瑠子 そうね。たまにいるわね。「総和」ということを、ここで考えてみて。この分子の部分がプラスならば、年々その額は増えていくわよね。それは、この数式にはないけれども、t+k時点が終わった後の、彼の預貯金に貯まっていくことになる。じゃあ、この部分がマイナスならば、マイナスを年々足していくわけだから、どうなるかしら。
布和子 これは分かるわ。預貯金がどんどん食いつぶされていく。
佐瑠子 その通り。これは危険な男のシグナルね。さて、分子の部分は分かったかしら。分子の部分を一言で言うと、専門用語になるんだけど、「キャッシュフロー」っていうの。さて、このキャッシュフローは分母にあるものによって割られている。次はこれを考えましょう。
布和子 rとかgとか分かんない物があるわ。
佐瑠子 rは、「リスク」の頭文字よ。つまり、さっきのキャッシュフローが崩れてしまう危険度のことを表しているの。rt というのは現時点でのそのリスクのことね。安定性の高い仕事についていて、昇給もきちんとした会社に勤めている。しかも本人も簡単に職を変えないような感じの人ならば、rは少ないと言えるわね。一方で、仕事に危険がつきもので、ケガをする恐れと隣り合わせのような仕事だったり、完全な実力主義で一気に収入を失うような可能性が高いような仕事だったりについている彼は、rが高いと言える。あとは、本人の志向ね。どういう人かによってrは違う。
布和子 友達の知り合いにチキショーって言って売れたコウメ太夫っていう芸人がいるんだけど、ああいう一発屋はrが高いってことね。
佐瑠子 そうね。お笑い芸人ってのは、すごくrが高い職業っていえるでしょうね。ちなみにコウメ太夫って、今は不動産で儲けてるらしいわ。
布和子 えっ…あれが大家さんなんて…。
佐瑠子 まあ、芸人とかスポーツ選手には多い話よ。話を戻しましょう。カッコの中は1+rね。このカッコはk乗になっている。これは、kが増えれば増えるほど、つまり将来になればなるほど、未来のことは分からないし、その分を割り引いて考えないといけないという事なの。ここでは詳しくは解説しないけど厳密に言うと、将来入ってくるお金、つまり将来の「キャッシュフロー」は、現在に置きかえたときは割り引いて考えないといけない。これを「ディスカウント」と言うの。
布和子 「ディスカウント」? ディスカウント・ストア、みたいな意味かしら。
佐瑠子 うーん。割引することには変わりないんだけどね。簡単に言うと、一年後に手に入る100万円と、今手に入る100万円だったら、どっちが価値があるかといったら、今手に入る方でしょう。その100万円を元手に、一年でもっと儲けられるかもしれないんだから。だから、一年後の100万円は、今の価値に置き換えると、90万円とか、割引をしないといけないの。この率のことを「割引率」(ディスカウント・レート)と言うの。
布和子 なんとなく分かるわ。
佐瑠子 ここらへんの話は、ニーズがあったら多分この話書いてるM氏が書くわ。さて、カッコはk乗になっているといったわね。つまり、将来になればなるほど、今の価値に置き換えたら、割引をしなければいけなくなるわね。
布和子 なるほど。最初の1+rが大きければ大きいほど、2乗、3乗とするごとにどんどん数は大きくなっていく。
佐瑠子 大きな数字で割り算すればするほど、分子、つまりキャッシュフローの数字は減るわね。それだけ、将来のことは割り引いて考えないといけないってことなの。
布和子 結構厳しいのね。
佐瑠子 当たり前よ! でも厳しいだけではだめなのよ。そのために、そのあとのマイナスgtというのがついているのよ。gというのは「グロース」。つまり、t時点での彼の将来性とか、成長率のことよ。平たく言っちゃうと、どれだけキャッシュフローが伸びていくかってこと。
布和子 男に将来性があるかどうかって、ほんっと大事。すごくわかるわ。
佐瑠子 なんか経験ありそうね…。さて、分母をまとめて考えてみましょう。(1+rt)k-gtだったね。
布和子 あ、なんとなくわかったかも。
佐瑠子 そう。kは無限大まで増えていくので、最終的には分子は限りなくゼロに近くなるくらいまで減るんだけど、そのスピードをg、つまり彼の成長率が落としているわけ。平たく言うと、リスクよりもグロースが大きい男は「買い」ってことね。
布和子 なるほど。…でもちょっと待って。総和と言っても、なんで無限大(∞)までなの。人間、いつまでも稼ぐ訳じゃないし、もっと言っちゃうといつか死ぬじゃない。
佐瑠子 いいところを突くわね。この数式は、もとは企業の株式の価値を算定するためのものなのよ。企業つまり「法人」は、死ぬ、つまり潰れることもあるけれども、うまくやっていけば生身の人間と違って、永遠に生きていく、つまり永続することもできる。だからここは無限大(∞)になっているの。でも、生身の人間は死ぬ。だから、この公式の∞の箇所は、本当は「死ぬ時」と入れたほうがいいのかもしれないわね。でも彼の価値を算定してる今から、大事な彼が死ぬ時を考えるのなんて嫌じゃない? だから、この公式の唯一のロマンスとして∞は残しておいたの。ね?
布和子 (こんな公式を使って彼の価値を計算している時点でどこがロマンスなんだろう…)
佐瑠子 えー。さて。これまでのことをまとめて言うと、こうなるわ。彼氏の現在価値とは、彼が今持っている預貯金(資産)と、彼が今後生み出すキャッシュフローの(彼の成長率も勘案した)割引現在価値を、無限の将来まで合計した値。
布和子 なんだかこう言うと急に難しく聞こえるわね。
佐瑠子 でもこれまでの説明で、意味は分かったでしょう。平たく言うと、彼の現在価値を考える上で検討すべきなのは、5点ということね。(1)彼がいまどれだけ資産を持っているか。(2)彼の収入は。(3)彼の支出は。(4)彼のリスクは。(5)彼の成長性は。これらの関係性を数式にしたのがこの公式ってことよ。
布和子 でも、言われてみるとこういうことって、男を見るときに無意識にチェックしてることね。
佐瑠子 そうなの。でも数式の偉大なところっていうのは、こういう当たり前だけどモヤモヤーっとしたことを、ズバリ言い切れてしまうところなのよ。さて、この公式からどんなことが言えるかしら。
布和子 金持ちのボンボンの男っていうのは、現時点でのSavingsが多いってことね。でも大体そういう男は、Expenseが多かったり、甘えきっていてgが小さかったりする。
佐瑠子 あなた経験ありそうね。
布和子 こんど愚痴らせて。後は、今のIncomeに注目するだけじゃなくて、rとgを常に考えなきゃいけないってことかしら。
佐瑠子 その通りね。企業買収をする際にも、必ずこの観点は持ってやっているのよ。
布和子 ATMであり続けてくれるかどうかってことね。でも待って。この公式だと、何かと将来のことについては割り引いて考えなきゃいけなかったりして、厳しいわ。そしたら「今」のことだけ考えて…つまり今、彼がもっている資産だけサラっとおすそわけを頂いて、うまみがなくなったら次の男に乗り換えればいいんじゃ…。
佐瑠子 (この女…まあ彼氏ができない理由はよく分かる…。だがむしろハゲタカファンドの才能あるんじゃないかしら…。)

つづく?

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