2010/01/19

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人材開発は、心理学をつかって研修やらコーチングやらで、てい良く人の気持ちを操作したいという欲望を抱えたものなのだ、というのが真ならば、私たちのビジネスは悪だ。そんなビジネスならば、僕はやらないし、やってはいけない。

恐ろしいのは、こんな風に言い表さなくても、こういうマインドが今、世には満ち溢れていることだ。掃いて捨てるほど出回っている、心理学を謳ったビジネス書の題名を書店の棚の端から端まで見てみればいい。

僕が広告というものに興味をもちながら、それでも就活のとき電通とか博報堂とかにエントリーできなかったのは、自分のやっているビジネスが悪であるかもしれない、と自分が疑念をもってしまうことを恐れたからだろう。広告が悪だということを言いたいのではない。広告をやることが、社会に対する悪しきマインドコントロールではなく社会に対して良い事をしていると心から信じられる人ならば、広告をやっていいんだと思う。たとえば、良きマインドコントロールによって社会の秩序を保つのは選ばれた人間にとっての義務なのだ、と本気で考えられる人のような。そういう人じゃないと、広告をやるのは精神的な健康に良くないと思う。

どうせ会社員になるのならば、自分が信じられる、正しいビジネスがしたいと思って、人材開発の世界に入った。この業界には、(そんなことは言っていないけれども)「人の気持ちを操作できる魔法が存在する」という思想が根底にあると思われる会社もある。そういう会社はそう感じた段階で辞退した。それで僕は、信じられると思った会社に入った。

それでもなお、人材開発という下手すれば眉唾な業界において、自問し続けている。大体なんだよ、「開発」って。油田じゃないんだから。

英語のHuman Resource DevelopmentのDevelopmentのところの直訳なのでしょう。

蛇足だが、思いついてしまった。油田などの「開発」を表す言葉は、英語でexploitであるが、「油田」を「人」に置き換えてHuman Resource Exploitにすると…。

……。

そんな人材「開発」なら、したくないし、してはならない。

閑話休題。まあ、会社に入ってまで、自分のやっている仕事に対して、「下手をすれば眉唾だ」とか、「自問し続けている」、とか言っているくらいなので、僕は相当会社にとって扱いにくい人間なのだろうな、と想像するのです。

心理学を人材開発に用いるのはまことに結構。研修やらコーチングやらで人に影響を与えることは、確かに心理学を用いればよりよくできるでしょう。正しく用いれば、人に優しくあることもできるでしょう。けれども、その根本にある欲望が、結局「他者をコントロールしたい」であるならば、それはHuman Resource Exploitになってしまうでしょう。

まかり間違って自分がやっていることが堂々とした眉唾になってないように常に気をつけるのは、人としての義務だと僕は考えているし、会社員だからということではなく人として、本当に価値の信じられるものを提供したいのです。

心理学を使おうが、他の何を使おうが、人の気持ちをてい良くコントロールすることができる魔法なんぞは、ないはずです。というよりも、あってはなりません。

僕の所属するような、人材開発会社が相手にしているのは、つまるところ人の心です。そして、それを動かさなければならないという、大変に難儀な仕事です。なぜならば、もしも、それを不思議なくらいに簡単に動かせる魔法があったとしても、それを使ってはいけないのだから。

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